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アキュラ通信

Vol.32 門と玄関の話

昔から住まいの顔として大切に考えられてきた門と玄関。今回はその意味や役割を、もう一度見直してみましょう。

門は家の格式を表す顔

いまでは「門」を設けないオープンな家も増えましたが、立派な門構えのお宅にお邪魔する時には、やはり身が引き締まる思いがするもの。「門」は昔からその家の格式を表す役割を果たしてきたのです。江戸時代の大工の棟梁平内家に伝わる書物には31の門の形式が記されているそうですが、それぞれに格式が決まっていて、身分や場所柄によって厳密に使い分けられていたとか。平安時代には正門を見れば、そこに住む人の身分が分かったそうです。ちなみに最も格式の高いのは「四脚門」といい、1本の門柱を前後2本の控柱が支える構造のものだとか。

帝も御門から転じた尊称

漢字の「門」は、一対の戸をそれぞれの柱に取り付けた形を現す象形文字から生まれました。日本でも上代から使われ、ド、ト、カドなどと発音されていました。「古事記」には天皇の宮殿を讃える歌の中に、「檜の御門(=ひのみかど。原文では比能美加度)」と記されていて、立派なヒノキの門によって天皇の権威が表現されています。この御門が転じて、帝(みかど)という尊称になったという説もあるそうです。

内と外を分ける結界

「門」は、住む人にとっては、緊張を強いられる「外界」と、守られた安心できる空間である「内界」を区切る結界でもあります。「男が一歩外に出れば七人の敵が待ち構えている」といわれますが、「門」を出るときには気を引き締め、臨戦体制になり、外から帰って門を潜った時には、緊張を解き放ってリラックスする。そんな心理的なスイッチの役割を持っているのです。門を潜るだけで「さあやるぞ!」という気合が入るのなら、立派な門を構える意味は大いにあるといえそうですね。また、家相的には、家の中の秘密が表に流れ出るのを防ぐ役割を果たすとも言われています。立派な門を見ると、『どれだけ秘密があるんだろう』などと、勝手に想像してしまいそうですね。

玄関のルーツは中国の「老子」

一方、「玄関」の語源は、論語と並ぶ中国の思想書「老子」の中の「玄のまた玄なる衆の妙なる門」に由来するとか。日本では鎌倉時代に禅宗で用いられた仏教用語です。「玄」は奥が深い悟りの境地の意味。「関」は入り口。「玄関」とは、奥深い仏教への入り口であり、その道を進む求道者を意味する言葉でした。そこから禅寺で修業を積む僧侶の住まい「方丈」への入り口という意味で使われだし、寺の門なども差すようになってゆきます。聖なる場所への入り口という意味を持っていたのです。これが江戸時代以降になると、一般の住宅の入り口の意味としても使われるようになりました。

玄関は訪問者をもてなす場所

「玄関」は、訪問者が最初に入る場所です。お客様をもてなす「家の顔」という役割を持った場所なのです。ですから日本人は、昔から玄関を美しく、清潔に保つことを重んじてきました。また、訪問者にもさまざまあります。玄関は、その用向きの軽重で対応を変える一種のフィルターの役割も果たしていました。たとえば回覧板や宅配業者なら玄関先の立ち話。ご近所の仲良しと世間話をするなら上がり框に腰掛けてもらう。もっと大事な用向きの時には、本来は今でいう応接間のような玄関座敷に上がっていただき、改まった対応をしたわけです。現在の住宅、とくにマンションでは玄関スペースは狭くなり、靴置き場のようになっているケースも珍しくありません。でも、それだからこそ、常に清潔に、整理整頓しておきたいものですね。

門と玄関はずらすほうがいい

「門」と「玄関」が一直線上に並んだ構造を「神社構造」といいます。これは、来るもの拒まずで、外部のあらゆる者を受け入れるという意味があり、神社としては問題ない構造です。しかし、住宅としては、外からの悪い物もすべて入れてしまう無防備な家になってしまい、よろしくありません。家相的には「門」と「玄関」はずらしたほうがいいようです。これは単なる迷信の類ではなく、防犯や防音上、あるいは寒風や強風を避けるという実利的な意味もあるのです。沖縄などでは門と玄関の間に衝立のような塀を設けてありますが、これも同様の工夫ですね。

「門」と「玄関」の持つ役割は、地域社会とのインターフェースです。毎日掃除をするだけで、その家の評判を上げる効果がありますから、ぜひ心がけたいものです。ゴミ屋敷にだけはしたくないものですね。