【超重要!】〈注文住宅〉も〈分譲住宅〉も〈リフォーム〉も…2025年注目の補助金「子育てグリーン住宅支援事業」をFPが徹底解説

【超重要!】〈注文住宅〉も〈分譲住宅〉も〈リフォーム〉も…2025年注目の補助金「子育てグリーン住宅支援事業」をFPが徹底解説

2025年に住宅の購入を検討している人も多いのではないでしょうか。住宅価格が急速に高騰していることに加え、住宅ローン金利も上昇を始めているため、そろそろ本気で家を買う準備をしよう……と考えているかもしれません。そんな住宅購入者の決断を後押ししてくれるような、住宅取得に対する国の支援制度が2025年も用意されています。この記事では、2025年にスタートする「子育てグリーン住宅支援事業」について解説していきます。

※本記事は2024年12月18日時点の情報をもとに構成しています。今後、制度の内容は変更になる可能性があります。

住宅支援事業の最近の流れ

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2024年には国の住宅支援事業として「子育てエコホーム支援事業」が行われていました。これは、子育て世帯または若者夫婦世帯が住宅を取得する際に、省エネ住宅を選択すると最大100万円の補助金がもらえるという制度でした。

この制度の目的はふたつあります。ひとつは2050年カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにすること)の目標達成のために、省エネ住宅の普及を後押しすること。もうひとつは、昨今の光熱費の高騰の影響を受けやすい子育て世帯が、省エネ住宅を取得しやすくし、家計を支援することです。

この制度において省エネ住宅とは「長期優良住宅」「ZEH水準住宅」を意味しています。誤解しやすいのですが、国による住宅支援は景気対策ではなく、2050年カーボンニュートラルを目標にした制度であることが特徴です。

この制度は2024年11月30日をもって申請が終了したのですが、2025年から後継となる新しい事業がスタートします。それが「子育てグリーン住宅支援事業」です。

「子育てグリーン住宅支援事業」
とは

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2025年から始まる「子育てグリーン住宅支援事業」は、さらに求められる省エネ性能が高くなっています。長期優良住宅、ZEHの基準はそのままですが、さらに上位の基準である「GX志向住宅」が登場しました。これはZEH基準を大きく上回る超省エネ住宅といえるもので、具体的には、次のような基準をすべて満たす必要があります。

①断熱等性能等級「6以上」
②再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量の削減率「35%以上」
③再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量の削減率「100%以上」

この断熱等性能等級6とはどのようなものでしょうか。たとえば北海道が属する「地域区分1、2」でのUA値(外皮平均熱還流率)は、建築物省エネ法において0.46と定められていますが、断熱等性能等級6の基準は0.28となっています。等級7となると0.20です。これは先進国の中でも最も厳しい基準です。2050年カーボンニュートラルへの国の本気度が伝わってきます。

このGX志向住宅の基準をクリアした住宅を取得すると、160万円の補助金を受け取ることができます。

住宅支援事業は「私たちの家計」に
どんなメリットがあるのか?

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そこでふと思うのが、「そんな高性能な省エネ住宅を買ったら結局、住宅価格が高くなるのでは? 補助金をもらってもそれ以上に資金計画が高くなるなら意味がないではないか」という疑問でしょう。

確かにZEHなどの省エネ住宅の基準を満たすためには、少なくない建築コストがかかります。経済産業省エネルギー庁によるZEH委員会「ZEHの普及促進に向けた今後の検討の方向性について 令和6年5月 」によると、ZEHの普及率が当初の目標に達していないことが分かります。新築注文戸建住宅の場合、2022年度で33%に。新築建売住宅の場合は、わずか4%に留まっています。この理由は建築コストの問題と思われます。

注文主の世帯年収が比較的高いハウスメーカーでの普及率は68%である一方、ビルダー・工務店では13%。低コストを期待されるビルダー・工務店では、省エネ住宅による資金計画の上昇を避けていることが想像できます。さらに価格が重視される新築建売住宅では、多くがZEH仕様ではないのが現実です。

省エネ住宅仕様にすることで光熱費が削減できるのは確実ですが、どのくらいの期間で建築コストを回収することができるのでしょうか。ごく簡単に計算してみます。

省エネ住宅にするためには

・一定の基準を満たす断熱材
・暖房、冷房設備
・換気設備
・給湯設備
・照明設備
・太陽光発電設備
・蓄電設備

などをハイレベルで導入する必要があります。これらの追加費用(イニシャルコスト)の合計を仮に400万円と想定します。次に維持費(ランニングコスト)として、パワーコンディショナーの交換、蓄電設備の交換が必要です。これに対して節約できる光熱費はどれほどでしょうか。国土交通省「家選びの基準変わります」によると、東京都23区の省エネ住宅の年間光熱費は239,000円と想定されています。これに蓄電設備を導入することで年間の光熱費が0円になると仮定します。

・イニシャルコスト:400万円
・ランニングコスト(パワーコンディショナー):30万円
・ランニングコスト(蓄電池):150万円
・国の補助金:▲160万円
・年間で節約できる光熱費:▲239,000円

これを計算すると、ランニングコストを含めても、節約できる光熱費によって18年ほどでイニシャルコストを回収することができます。15年ごとに蓄電池とパワーコンディショナーの設備更新を行ったとしても、「元が取れる」計算です。今後、電気料金の値上げがあった場合や、蓄電池の価格が下がった場合、イニシャルコストを回収するスピードは速まります。

※イニシャルコストは住宅を建築する地域や気候、立地条件、ハウスメーカーなどによって大きく変化します。また太陽光設備による発電量は天候などにより一定ではありません。上記の試算はあくまでもざっくりとしたイメージです。

GX志向住宅は
「健康」にも影響する

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ただし、補助金や地球温暖化防止のためだけに値段が高いGX志向住宅を選択することは考えにくいと思います。

高性能な省エネ住宅が私たちに与える最も大きなメリットは、「健康」です。断熱性能が抜群に優れていることによって、少ない光熱費で安定した気温のなかで生活することができます。そのことで、ヒートショックによる健康被害を予防することができるのです。

もし、断熱性能が低い寒い住宅を買い、浴室でヒートショックによる脳梗塞を発症したとします。幸い命を取り留め、1ヵ月ほどの入院後自宅に戻るのですが、長期間、職場への復帰は難しくなるかもしれません。体に負担のある長時間通勤や残業はできなくなります。責任が重い管理職への昇進のチャンスがあっても辞退せざるをえません。血圧に悪影響の環境はすべて避けなければならないのです。

当然ながら、収入は下がってしまうでしょう。もし年間150万円ほど収入が下がった場合、15年続けば2,250万円もの損失を被る計算になります。

GX志向住宅へとグレードアップするためには2,250万円もの差額は必要ないはずです。少しの投資によって、健康とそれがもたらす収入を守り、さらには補助金が受け取れると考えると、興味が湧いてくる方も多いと思います。

「子育てグリーン住宅支援事業」は
新築住宅だけではない

2025年からの子育てグリーン住宅支援事業は、GX志向住宅だけを対象としているわけではありません。

「18歳未満の子を有する世帯(子育て世帯)」または「夫婦のいずれかが39歳以下の世帯(若者夫婦世帯)」に限定されますが、長期優良住宅やZEH水準住宅も補助金の対象になります。

また、既存住宅への断熱改修(リフォーム)にも補助金が用意されています。新築の賃貸住宅も子育て世帯の優先的な入居と優遇された家賃設定をすることによって補助金を受け取ることができる特則も計画されています。

補助金を受け取りながら、家族の健康と地球環境問題にも貢献できる省エネ住宅を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

※本記事は2024年12月18日時点の情報をもとに構成しています。補助金は個人に直接支給されるものではなく、住宅会社(事業者)に対して振り込まれます。制度の内容は今後変更になる場合があります。最新情報は担当者にご確認ください。

長岡 理知

長岡 理知
長岡FP事務所 代表

2005年プルデンシャル生命保険に入社。2009年より大手住宅メーカー専属FPとして家計相談業務をスタート。住宅購入時の相談は累計3500世帯を超える。2020年に保険会社を退職し、住宅専門の独立系FP事務所を設立。
住宅を購入する時の予算決めと家計分析、リスク対策を専門業務とする。建物の構造・仕様・施工品質による維持費の違いや寿命に着目し、安易な建物価格での比較に警鐘を鳴らしている。