矜持

後で後悔しないように先回りして適切にアドバイス

一般に注文住宅への満足度は建売住宅や分譲マンションなどに比べて高いといわれていますが、ほんとうにそうでしょうか。私は、実はそうではなく、内心ではいろんな不満はあるけれど、我慢しているお客さまが多いように思えてならないのです。

ですから、現状の評価に甘んじるのではなく、もっともっと評価を高めるような努力が欠かせません。それが、プロとしての住まいのつくり手のあり方ではないでしょうか。

たとえば、設計の打ち合わせの段階では、お客さまの要望を一方的にお聞きするだけではなく、住まいのつくり手としての意見を明確にすることも大切だと思います。お客さまは、多くの場合、住まいの設計は一生に一度のことですから、よく分からない部分があったり、間違った考え方を持っていたりするかもしれません。それを何でもかんでも、お客さまがこう言っているからと受け入れてしまうと、後でお客さまがたいへん後悔することもあり得ます。

デメリットもきちんと伝え、さらに複数の代替案が出せるのがプロ

これまでの住まいのつくり手としての経験値、プロとしての将来予測などを踏まえて、メリット・デメリットをハッキリとお伝えする、また、お客さまのご希望の先回りをして、「こういう考え方もありますよ」と、アドバイスするのがほんとうのプロではないかと思います。

たとえば、お客様から屋上を作りたいという要望があった。担当者は当然、何のために使うイメージかをヒアリングするでしょう。そこで「バーベキューをしたい」という要望があったとします。が、私たちの経験から言えば、実際に屋上でバーベキューをしたのは数回しかない、というお客様も多いのです。一方で屋上を作るには、防水工事などを含めて百万円超の費用がかかったりというデメリットもあります。そのデメリットをしっかりお伝えしたり、代替案を出すことが重要です。

たとえば屋上の代わりに1階のアウトドアリビングをご提案してみる。ただアウトドアリビングは費用は安いですが、屋上と違って周囲からの視線が気になるというデメリットがあります。そこで、風通しの良い囲いを作って視線を遮るなどの工夫も合わせてご提案するのです。 収納スペースとして人気が高い小屋裏収納も同様です。通常の2階建てでは、収納スペースの天井高が1.4m以下になってしまい、案外使いにくいこともあります。さらに折り畳みタイプのハシゴを下げて小屋裏に上がるタイプだと、ついつい面倒になり使わなくなり、結局不用品が溜まっていくだけということもあります。高い費用をかけて、使わなくなるものを作る必要があるのか。私たちつくり手はそのような事実をお客様にお伝えし、作らないほうがベターではというアドバイスをすることも必要です。どうしても必要であれば、上り下りがしやすいようにしっかりした階段を付け、十分に活用できるような提案をすることが重要だと思います(写真参考)。

住まいづくりには譲ってはいけない原理原則がある

住まいのあり方は多様化しています。それを個性と呼べば何でもありになってしまいます。でも、住まいづくりには譲ってはいけない原理原則があるはずです。住まいの作り手として、プロとしてそれを養っていかなければなりません。

もちろん、お客さまの個性に合わせにくいときもあるでしょう。でも、それを正しい方向に導いていくのがプロではないでしょうか。住まいの作り手として、「こういう家をつくりたい」という理念をシッカリと確立するべきです。それは変えるべきではありません。10年後、20年後に後悔することになるので、こうしておきましょうと、プロとして事前にお伝えして、正しい方向に導いていくのがほんとうのプロではないでしょうか。

  •  
  •  
  •