11.強み

25年前の工務店は、どんぶり勘定が当たり前だった。いまのようなコスト管理を根付かせたのは、「アキュラシステム」によるところが大きい。さらに言えば「高品質・低価格」な家づくりを浸透さ せたのもアキュラホームだろう。住宅・工務店業界に常に風を吹き込み、新しい常識をつくってきた同社が次に着手するのは、垣根を超えた「賢い連携」だという。アキュラホームグループの宮沢俊哉社長に話を聞いた。

私は15歳で大工修行に入り、19歳(1978年)で独立しました。当時は「勘と経験と度胸」がものを言う住宅業界。祖父も父もそれを地でいく大工職人でした。

そんななか、パソコンが得意だった20代の私は、コスト分析や経営分析の重要性に目覚め、そのしくみづくりに没頭。家づくりにかかる人件費・材料費など約2万項目をデータベース化し、詳細を1つずつ見直すことで、旧来の慣習的な仕入れ単価・工賃ではなく、適正価格で家を建てるしくみ「アキュラシステム」を独力で開発。94年に全国公開しました。

下請け・孫受け工務店として家づくりに携わるなかで、「日本の住まいは高すぎる」という問題をなんとか解決したかったのです。

アキュラネットを設立。やがてジャーブネットへ

90年代後半には、大手ハウスメーカーや建売業者の台頭により、地域のつくり手の存在感が急速に薄れ、住宅工法も業界全体がプレハブや2×4へと傾いていきました。

危機感を感じた私は、日本古来の木造軸組工法を進化させた「新世代ハウス」を開発。そして1998年、アキュラシステムを基点にした新世代ハウスの供給事業を全国の工務店とシェアし、みんなで一緒に成長しようと呼びかけたのです。これが工務店ネットワーク「アキュラネット」の始まりであり、2005年には「ジャーブネット」へと発展しました。

これまでに2700社以上がアキュラシステムを導入し、ピーク時には約600社がジャーブネットに参加。ここでの学びや出会いをきっかけに独自の成長を遂げた工務店を数多く輩出できたのも、うれしい果です。

強みの集積所「SABM」を設立

昨年、アキュラホームグループは創業40周年、ジャーブネットは設立25周年を迎えました。この大きな節目に、「世界に誇る日本の住環境を目指す」というミッションを掲げ、私たちはまた新しい挑戦を始めることにしました。それは「SABM」の設立です。

SABMとは「スマートアライアンスビルダーズメンバー」の略で、いまあるアキュラホームグループとジャーブネットをさらに発展させ、つくり手が一生学べて、切磋琢磨し合える賢い連携をつくろうという発想から生まれたもの。参加資格は、先ほどのミッションに賛同する「すべての人」です。

なぜSABMを発足するに至ったのか。それは、工務店にとっての住宅事業、住まい手にとっての家づくりが、より一層難しくなっているからです。

いまは、価格が安いだけではもちろんダメで、住まい手の多種多様なニーズ・ウォンツに柔軟に対応しつつ、地域特性や数十年後の価値まで考慮して家づくりを行う必要があります。実際、何に重点を置けばいいかがわからなくなるほど、工務店は考えるべきこと・やるべきことが多過ぎて、1人あるいは1社の力で住まいを提供するのはもう限界にきています。

そこでSABMは、理想の家づくり、理想のつくり手を叶えるためにまず1億円を拠出。何らかの「強み」をもつ人を業界・業種の垣根を超えて大募集します。

ジャーブネットでも長年「結果創出型勉強会」を通じて、集客やローン提案といったある分野の達人に教えを乞い、学び合い、チームで結果を出してきましたが、SABMはよりボーダレスで、高度な「文殊の知恵」のプラットフォームと言えます。

応募者のメリット。対価支払い、事業化も応援

SABMが募集するのは、たとえば、商品開発や家守り・まち守りに関するものから、コストダウンや建築合理化のしくみ、先進的な施工管理システム、海外技術の活用…など、何世代にも渡って住み継がれる理想の家づくり、理想のつくり手に近づくために自らが極めた「これぞ!」というアイデアであればテーマは問いません。同業の建築業者はもちろん、コンサル、資材業者、しくみ提供者、海外の方も大歓迎です。

素晴らしいアイデアにはきちんとした対価をお支払いし、チームを組んで謙虚に学ばせていただきます。 アイデアが採用されれば、少なくともアキュラホームグループの社員1200人・120拠点、ジャーブネットを合わせると300拠点を超えるつくり手でシェアします。年7000棟弱の新築にあなたの強みが注入され、それが日本の住文化の成長、業界の発展につながるかもしれません。

また同時に、私たちもこれまで、長い年月と豊富な人材を投入してさまざまな研究を行ってきた実績があるので、SABMを学びの場、成長の場、人とつながる場ととらえ、こちらの強みもどんどん活用してください。テーマによっては一緒に取り組むことで成果が出るものもあるでしょうし、ビジネス化に向けた応援・出資も積極的に行っていくつもりです。

「1億円」と聞くと構えてしまう人もいるかもしれませんが、我々としては研究開発費の一部であり、日本の、地域の住環境を良くするための一手段に過ぎません。最初から完成形でなくとも、トライアンドエラーを繰り返し、形になるものが1つでもあればいいと考えています。

私も20代のあの日、自分が開発した「アキュラシステム」が果たして業界で通用するのだろうかと、腕試しのつもりで世に出しました。それが、想像もつかないほどたくさんの人をつなげてくれ、いまがあります。皆さんのアイデアを業界全体に発信し全国のつくり手たちに活用してもらうことで、日本の住環境に寄与するとともに、応募者の方々も成長し発展していきましょう。

※このインタビューは新建ハウジング12月10日に掲載されている記事になります。

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