2024.06.07
その他
500㎡超の柱のない大空間、中大規模木造建築の「構造実験棟」が完成!
日本初※1 中大規模木造建築専用の最大級の各種試験機を貸し出し、16兆円市場の中大規模建築の木造化普及活動に貢献
株式会社AQ Group(本社:埼玉県さいたま市西区、代表取締役社長:宮沢 俊哉)は、埼玉県上尾市の木造建築技術研究所内に、住宅用一般流通材のみを使用した500㎡超の無柱大空間「構造実験棟」を建設し、4月2日に完成させました。この度、「水平加力試験」「鉛直加力試験」の複合機が設置され、6月3日から試験機の稼働を開始しました。中大規模木造建築の開発専用最大荷重500kNの水平加力試験機は公開施設としては日本初※1となります。
住宅用一般流通材のみを使用した
500㎡超の無柱大空間
一般工務店でも施工可能な
非住宅木造のプロトタイプ
弊社は、本社(埼玉県さいたま市西区)から車で約15分、埼玉県上尾市に敷地15,000㎡超の木造建築技術研究所を所有しております。この研究所は、弊社の技術開発の場となり、戸建て住宅から中大規模木造建築における技術革新の加速を目指して活用されます。この度、木造建築技術研究所敷地内に有する「構造実験棟」が4月に完成しました。木造建築技術研究所内の構造実験棟は、全て住宅用一般流通材を使用し、最小限の部材で構成された合理的な木造トラス(「AQトラス」意匠権出願中)による、512㎡(約310帖)の無柱大空間を実現しています。
弊社は、木造軸組SI設計の住宅を20年来実践してきており、自社開発の柱と一体化した高耐力壁や剛性の高い床を使い、30帖を超えるリビングに柱のない大空間を実現させてきました。また実物大耐震実験をはじめ、耐雨・耐風の実証実験も行い、性能を担保しながら余剰な部材を省き標準仕様化してきました。この構造実験棟などの非住宅分野に取り組むにあたり、柱のない大空間とするため16mもの木造トラスを一般普及型で開発しました。大スパンかつシンプルな構造とし、内部は木のあらわしとして、無駄の無い最小限の構成の木質空間を表現しました。またこのトラスは桁行方向に延ばし面積拡張すれば別の用途でも活用することができ、木造軸組み工法平屋建てで特殊工法ではないため、従来の木造大工でも建築が可能となり、一般普及がしやすくなっています。
さらに、構造実験棟の建築費は、坪40万円以下。同規模の鉄骨造建築と比較し、3割以上のコスト削減を実現しました。一般流通材を使用したこの技術は、中小ゼネコンや地域工務店でも中大規模木造建築を可能とし、今後、脱炭素社会実現に向け、中大規模木造建築の普及に貢献すると考えています。
【木造建築技術研究所 構造実験棟 概要】
事業者:株式会社AQ Group
建築地:埼玉県上尾市小敷谷225-1
敷地面積:15,495㎡
建築面積:526.4㎡
延床面積:512.0㎡
最高高さ:9.9m
構造:平屋建て 純木造軸組工法
用途:木造技術専門研究
施工:株式会社AQ Group
竣工日:2024年4月2日
日本初※1の木造専用中大規模の試験が可能
木造建築業界全体の技術力向上を目指し「試験請負業務」も開始
技術開発において、これまでは木造専用試験場はなく多目的な試験場で木造の実験を重ねてきました。試験設備を持たない中小企業・大学の研究においても戸建住宅から中大規模木造までの研究開発を実施できる場所として木造建築技術研究所を計画し、6月から「構造実験棟」で、木造専用の試験機の稼働が開始いたしました。構造実験棟では「水平加力試験」「鉛直加力試験」の複合機が設置され、面内せん断試験や曲げ試験・軸圧縮試験などを行うことが可能です。木造住宅用の開発に対応した試験だけでなく、中大規模木造建築の開発に対応します。木造専用で最大荷重500kNの水平加力試験を外部から「試験請負業務」を受ける施設は日本初※1となります。
この施設は業界全体の技術力・品質の向上を加速させます。弊社単独ではなく、業界全体の技術が向上することで、木造建築技術の向上、そして日本全国への中大規模木造の普及に大きく寄与すると考えております。
【試験内容 水平加力試験】
・最大荷重 200kN/500kN
※500kNの試験機稼働開始は2024年10月予定
・幅 約3m以下
・高さ 約4.2m以下 ※要相談
・用途 面内せん断試験など
【試験内容 鉛直加力試験】
・最大荷重 500kN
・高さ 約2m以下 ※要相談
・用途 曲げ試験・軸圧縮試験など
■試験請負のご相談はホームページから承っております。
https://www.aqura.co.jp/woodengineers/
木造建築 封印100年の
歴史から解き放たれ、
街並みに木造建築が建ち並ぶ未来を
加速する「Re:Treeプロジェクト」
1923年関東大震災では13万戸の家屋が全壊、44万戸が焼失。また、1959年の伊勢湾台風の被害を鑑み、建築物の火災・風水害の防止を目的に、特に危険の著しい一部地域の建築制限のひとつとして「木造禁止」が提起されました。木造は悪者となり、街のほとんどがコンクリートや鉄骨で建築され、日本の都市部の街並みの中に木造建築物は見られなくなりました。
その100年後、現在では地球規模の課題であるカーボンニュートラル社会の実現、循環型地域社会の構築に向けて、木造建築は世界中から注目を集めています。国も木造建築を加速させるため、補助事業や制度を制定し建築物の木造化・木質化を推進。都心商業ビルでも木造建築を提唱するプロジェクトが10近く存在しています。しかしこれらのビルは、鉄骨やコンクリート造などのハイブリット工法の特殊な技術ため、一部の限られた施工会社のみが可能な建築方法で、建築費に関しては、補助事業や制度を利用しても鉄筋鉄骨コンクリート造と比較して、約2倍のコストがかかっているため、必然的にシンボリックな建物として建築され、一般建築への普及の道は大きな課題となっています。
弊社は、中大規模木造建築を普及させるためには、日本国内で最も普及している「木造軸組工法」をベースとし、住宅のプレカット技術や一般流通材を利用することで、地域のゼネコンや工務店・大工が設計施工可能となる“普及型”の開発が重要と考え、10年にわたって研究開発を続けています。そして、これまでに普及型純木造ビルのプロトタイプとして建築した「8階建て純木造ビル」「5階建て純木造ビル」に加え、普及型の中大規模木造建築として、平屋建て500㎡超の無柱大空間「構造実験棟」を建築。弊社が開発したこの技術は、低コストかつ大空間が実現でき、木造化が進みにくい倉庫や事務所・店舗への一般普及を見据えて開発されました。
そしてこの度、構造実験棟で稼働する様々な試験は、住宅だけでなく、中大規模木造建築で用いることを想定した耐力壁の開発が可能となりました。研究開発の速度を上げ、木造建築の技術を磨くことで、これまで以上に木造建築の普及に貢献できると考えています。
環境的にも優れた中大規模木造、
5階以下の非木造の
16兆円市場規模への参入
中大規模の木造建築は、森林資源の循環やCO2排出量削減など世界的な課題であるカーボンニュートラル実現に大きく寄与することから世界中から注目が集まっていることは前述の通りです。しかし、日本国内における1年間の着工建築物全体の木造率は45.5%に留まっており、非住宅建築物や中高層建築物のほとんどは木造以外の構造で建築されています。特に、5階建て以下の非木造建築物の床面積は合計で3,900万㎡とされており、㎡単価を40万円とすると、約15.7兆円の市場規模となります。今後、「普及型木造ビル」の技術を駆使し、5階建て以下の領域で木造ビル・木造マンション・商業ビルを展開してまいります。
この度稼働を始めた「構造実験棟」は、普及型の中大規模木造建築のプロトタイプとして、また、中大規模木造建築の開発に対応した日本初※1の水平加力試験ができる研究施設となります。
出展:令和4年度森林・林業白書
このような取り組みを、弊社は日本の街並みに木造建築を復興する「Re:Treeプロジェクト」として推進しています。全国のつくり手とともに「普及型純木造ビル」を全国に広め、脱炭素社会の実現を目指してまいります。
※1 2024年6月自社調べ(公開、貸し出し可能な木造専用設備として)