資産価値を維持するための土地選びとは?
「一生住むつもりだから、家の資産価値は別に将来どうなってもいい」確かに一生その家に住み続けるのであればそのとおりです。
しかし、家とは人が住むための必須の環境ではありますが、同時に換金できる資産なのです。
資産という観点を重視して家を選べば、将来的に生存のための選択肢を増やすことにもつながります。
■将来の資産価値の重要性とは
老後2,000万円問題という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。
金融庁が「多くの人は老後の30年間で2,000万円足りなくなる」という試算をまとめました。年金だけでは老後の生活費が足りないのです。
そこで重要になるのが土地の持つ資産価値です。建物そのものは経年劣化により価値は徐々に失われます。しかし、土地の利用価値は変わりません。
資産価値が失われない土地を選んで家を建てれば、老後には少なくとも土地の価値だけの資産は残っていることになります。
土地の価値が2,000万円あれば前述の老後2,000万円問題は解決できるのですね。
■家の資産価値は売らなくても活かすことができる
老後になって資金が足りなくなったら、売って換金できることが唯一家の資産価値だと思っていらっしゃるでしょう。
しかし、他にも資産価値を活かす方法はあります。
まず「リバースモーゲージ」という融資制度があります。住んでいる家を担保にして融資を受ける方法です。
その家に住んでいるご夫婦が亡くなるまでは、融資の利息だけ払えばずっと住んでいられます。また「リースバック」という方法もあります。
住んでいる家を売却して、その後は賃貸住宅として家賃を払って住む方法です。
リバースモーゲージやリースバックは、近年では高齢者の利用が増えており、家を売らずに住み続けられる方法として定着しつつあります。
「家を売って換金する」「リバースモーゲージ」「リースバック」いずれにせよ、その資金を得るおおもとは家の資産価値で、その大部分は土地に対する価格なのです。
一生自分が住むつもりでも土地の資産価値は重要なのです。
■資産価値を維持するための土地の選び方
日本全体が人口減少の局面に入っているので、基本的には土地の価値は下落していくと考えるべきです。
土地の資産価値を維持したいと考えるのであれば、厳しく吟味して土地を選ぶ必要があります。その選ぶポイントは大きく分けて3つあります。
(1)立地の評価
〇土地の利便性
これが資産価値を左右する最重要ポイントです。いくら立地条件が悪くても、利便性の高い土地であれば高い資産価値を持ちます。
仮に東京の中心部であれば洪水に見舞われる可能性が高かったり、急斜面で建物を建てるのに向かないような土地だったとしても高い価値を持ちます。
それは土地の利便性が高いからなのです。では利便性の高さとは具体的には何を指すのでしょうか?
〇交通の便の良さ
利便性が資産価値の中で最重要ポイントと書きましたが、利便性の中でもこの交通の便の良さが最重要ポイントです。
つまり、この交通の便の良ささえクリアできれば資産価値はほぼ守られるということです。
交通の便の良さとは「駅からの距離」「都心・地域の中核都市へのアクセスの良さ」この2つを指します。
・駅からの距離
駅から徒歩10分圏内であることが望ましいです。バスに乗らないと駅に行けないといった立地は著しく不利になります。
・都心、中核都市へのアクセスの良さ
駅に近いだけで資産価値が高くはなりません。都心や中核都市へのアクセスが良くなければ資産価値としては低いものとなります。
大都市の通勤圏ではない郊外の場合は、地域の住民がほとんど鉄道を利用しないので駅の近さはそれほど関係ありませんが、資産価値を重視するならばそもそも選ぶべきではありません。
〇インフラが整っているか
道路や上下水道、都市ガスが整っているかも重要です。
・道路について
6メートル道路であれば理想的です。6メートル道路は区画整理された住宅地や、大規模分譲地にみられる高規格の道路です。
自動車の出し入れやすれ違いが楽です。また、消防車などの大型車両が通行するにも支障がありません。道路が広いと日当たりも良くなるというメリットもあります。
ただし、いくら広いといっても交通量が多いと、騒音や渋滞の問題があるため好ましくありません。
自動車が普及していなかった時代に開発された古い市街地では、昔の基準1間(1.8メートル)や2間(3.6メートル)といった道路が多くあります。
このような4メートル以上の幅の道路に面していない土地の場合、道路の中心部から2メートルの距離まで後退して家を建てなければならないのでできる限り避けるべきです。
・上下水道、都市ガスについて
交通の利便性が高い地域で、上下水道や都市ガスがないエリアはあまりありませんが、念のために確認しておきましょう。
〇公共施設が充実しているか
市区町村役場、図書館、郵便局、公園、公共の体育施設、博物館、公民館といった公共施設が周辺にあると利便性が大きく高まります。
〇病院が近くにあるか
総合病院が近くにあるとよいでしょう。しかし、家の隣であるような場合は、頻繁に救急車がやってくるので騒音源として敬遠される可能性があります。
(2)街のイメージ
街が持っているブランド力は資産価値に大きく影響します。古くからの歴史があったり、高級住宅街として知られていたりする地域の資産価値は下がりにくいものです。
また、有名なランドマークの有無は資産価値に大きく影響します。大規模な公園、建造物などがあるとプラスです。
都心からの距離や、駅からの距離、周辺の利便性は他の地域と比べてもそれほど優れているわけでもなくても、イメージが良いため高い資産価値を持っている地域もあります。そのように街のイメージは重要なのです。
〇治安の良し悪し
治安の良し悪しも資産価値に影響します。治安の良し悪しは犯罪情報マップで確認することができます。
また、実際に現地を下見した際に、交番があればその地域の治安の状況について聞いてみるといった方法は有用です。また、公園などの施設が落書きやゴミで散乱しているなど荒れていたら要注意です。
〇スーパーやコンビニが近隣にあるか
「スーパー至近」といったように、不動産の広告でもよくキャッチコピーとして使われるほど重要な要素です。
〇小中学校は近くにあるか、また通学路は安全か
子供の通学の安全は近年特に重視される傾向があり、特に小学校が近いことは大切です。
危険な道路を通らないと小学校に行けないという立地は、敬遠される可能性があります。しかし、あまりにも小中学校が近すぎると、敬遠されるので近すぎない場所がよいでしょう。
〇同時期に建った住宅が多いと将来的に下落傾向に
大規模開発の団地などがこれにあたります。
確かに造成されてしばらくは地価が高くても、将来的には大きく下落する可能性が高いのです。
なぜならば、同時期に居住を始める人が多いので、これらの人々が一斉に歳をとっていくからです。
自分が歳をとったときのことを考えてみましょう。周辺の住民も同じように歳をとっており、街全体が高齢化して活気が失われているはずです。
そして、広い家が要らなくなったから売却しようとしてもどうしても安くなりがちです。周辺住民も同じように売却しようとしていることが多く、同じような物件が多く売りに出るため安くなってしまうのです。
子供が家に住んでくれればいいのですが、家というものは技術の進歩や、社会情勢の変化によって求められる条件が変わってきます。
そのため、子供は家に住むことなく、売ることも難しくなります。
昔の規格で作られ、当時は「夢の街」と言われたような住宅地でも、現在は社会情勢に合わず過疎化が進んでいる街も数多くあります。
多摩ニュータウン、高島平団地、千里ニュータウンなどがこの代表格といったところでしょう。
現在の常識では高規格といえる住宅地でも、20年後、30年後となったら時代遅れになっている可能性が高いのです。
そのため、資産価値を考えると同時期に建った住宅が多い地域は避けたほうが無難なのです。
■土地そのものの価値
〇災害への強さ
近年重大な災害が日本列島を襲っています。特に地震と台風です。これらの災害へのリスクは国土交通省が提供するハザードマップで調べることができます。
ハザードマップで調べれば、洪水・土砂災害・高潮・津波に対するリスクを簡単に調査することができます。
これにプラスして、実際に現地に足を運ぶことも重要です。傾斜地であれば大雨のときに地すべりやがけ崩れの危険があります。
また比較的平坦な土地であっても、すり鉢の底にあるような周囲より低い土地であれば注意が必要です。
近隣の雨水が集中して下水管や雨水管から水が吹き出す、いわゆる都市型水害に見舞われることもあるからです。
参照: 国土交通省 ハザードマップ
〇私道負担の有無
土地に面している道路が私道かどうかは絶対に確認が必要です。私道であった場合には、その道路には所有者がいます。
上下水の工事を行うために道路を掘り返したいといった場合に、所有者の許可が必要になります。所有者がこれを認めないと工事ができないのです。
また、私道の所有者が「私の家には小さな子供がいるので、車で通行しないでくれ」などと主張し始めると面倒なことになります。
このようなトラブルを避けるためには、土地に面している道路は公道であることが絶対条件といえるのです。
〇土地の形
土地の形が正方形もしくは長方形の土地は整形地といいます。
これに対して、整形地以外の土地は不整形地といい、整形地に比べると土地の評価は下がります。
不整形地の例を挙げておきましょう。
〇日当たりの良否
日当たりが悪い土地は価値が低くなりがちです。
現在は日当たりが良くても、南側がマンションなどの高い建物に建て変えられてしまう可能性もあることに注意が必要です。低層住居専用地域であればその心配はありません。
〇道路付け
角地は不整形地としてのマイナスを差し引いても資産価値として高いものです。特に東南角地は日当たりがよく理想的といえます。
〇土地の大きさ
小さすぎる土地は建物が制限されます。また車庫のスペースが充分に取れないといった様々な制約があるため、どうしても資産価値としては低めになります。
〇土地の利用規制
昔は高級住宅街の代名詞でもあった田園調布ですが、近年は地価の下落が目立つようになりました。
その大きな原因の一つが敷地を165㎡以下に細分化してはいけないという規制です。高級住宅街としての景観を保つための規制なのですが、地価の下落の一因となっているのです。
面積が広いと、総額が高くなりすぎて買える人が少なくなってしまうのです。そのため売れる金額まで下げなくてはならなくなり、資産価値として低くなってしまったわけです。
〇迷惑施設の有無
ごみ処理施設、精神科病院、刑務所、葬儀場、火葬場、新興宗教の施設、幼稚園、保育園、小学校、墓地、パチンコ店、風俗店などがこれにあたります。
小学校などの施設は近くにあることが望ましいのですが、あまり近いと騒音源として敬遠される原因になります。
〇近所にトラブルメーカーの存在
トラブルメーカーの存在は、持ち家に住む人にとって最大のリスクといえます。
例えば騒音をまき散らす、何かと難癖をつけて文句をいう、不衛生な環境で猫や犬を何十頭も飼育している、庭にゴミを積み上げているなど。
また、暴力団事務所は近所に存在するだけで潜在的な脅威となります。
暴力団事務所の存在については、警察で質問することもできます。
トラブルメーカーの存在については地域の自治会長などに聞く、興信所に調査を依頼するといった方法もあります。
■まとめ
これまで土地の選び方についてご説明してまいりました。
かなり厳しいと思われたかもしれませんが、資産価値を重視するのであれば土地は吟味の上に吟味を重ねる必要があるのです。
これをすべてクリアできない場合でも、最低限土地の利便性だけは考慮することをお勧めします。