色がわたしたちに及ぼす作用には2種類あると言われています。1つ目は生理的作用です。たとえば、赤色には血圧を上げる効果があり、青色には血圧を下げる効果があるというように、意識とは別に色彩によって作用される効果のことです。他にも、血圧だけでなく、色彩は食欲、筋肉の緊張、睡眠などにも影響を与えています。続いて2つ目は、心理的作用です。さらに、この心理的作用には、知覚作用と感情作用があります。まず知覚作用とは、それぞれの色が個人の置かれている環境や経験に関わらずもっている意味やイメージ、視覚に訴える力のことです。視覚に訴える力とは、膨張色や収縮色、進出色や後退色など、色によって実際と異なるイメージをもたせる効果のことです。また、それぞれの色の色相・明度・彩度が周囲の色に影響され、実際とは異なる色のように見えてしまう現象も知覚作用に含まれます。たとえば、明度差がある2色の配色は、互いに明るい色をより明るく、暗い色をより暗く見せる視覚効果があります。次に感情作用とは、緑を見ると癒された気分になったり、黄色を見ると明るい気持ちになったりするというように、見る色によって感情に影響が出る効果のことです。これは、前回の投稿で述べたような、それぞれの色がもつ一般的なイメージが関係していると考えられます。

 

■暖色と寒色

暖色と寒色によって生じる感覚とは、実際に色に温度はないのにも関わらず、わたしたちは色を見て暖かさや冷たさを感じることがあるとされています。ビーカーに同じ温度の水を入れ、色だけを変え、指を入れて温度感を確かめるという実験が実際に行われていますが、橙が1番暖かく、赤、黄、緑、青、そして白の順番に冷たく感じられるという結果が出ています。色から感じる温度は確かに存在すると考えられます。

 

■興奮する色と沈静する色

興奮する色と沈静する色によって生じる感覚とは、色を見るとわたしたちは気持ちが高ぶったり落ち着いたりすることがあるとされています。闘牛の赤い布に代表されるように、色には興奮感を与える色と、反対に気持ちを落ち着かせる色があります。暖色系で彩度の高い色は、鮮やかであればあるほど興奮感を与えるため、スポーツのユニフォームなどに活用されています。娯楽施設や商業施設などには興奮色の配色が適しています。また。寒色系で彩度の低い色は、沈静感を与えるため、スーツやインテリアなどに活用されています。図書館やオフィスなどには沈静色の配色が適しています。

 

■進出色と後退色

進出色と後退色によって生じる感覚とは、同じ距離にあっても、わたしたちは色によって近くにあるように感じる色と遠くにあるように感じる色があるとされています。暖色系の色は近くにあるように、寒色系の色は遠くに感じられます。インテリアでの活用方法としては、進出色は廊下の奥に施すことによって、長い廊下の距離を短く感じさせることができます。反対に後退色は壁一面に施すことによって、部屋を広く見せたり奥行きを感じさせたりすることができます。

 

■膨張色と収縮色

膨張色と収縮色によって生じる感覚とは、同じ大きさのものでも、わたしたちは色を見て実際よりも大きく感じたり小さく感じたりすることがあるというものです。身近なところとしては、ファッションを決める際に意識されることが多いでしょう。同じデザインの服でも、白や黄色の服は太って見えたり、黒や紺色の服はスッキリ見えたりします。日常生活の中でこのような色の効果を感じているため、白系の服は膨張色として、黒系は収縮色として一般的に知られています。この膨張色と収縮色を考慮したものとして、囲碁の碁石があげられます。膨張色と収縮色の関係から、白の碁石と黒の碁石を同じ大きさにすると、白の碁石の方が大きく、黒の碁石の方が小さく見えてしまいます。そこで、白の碁石を少し小さく、黒の碁石を少し大きく作っています。こうして同じ大きさに見えるように工夫がされているのです。

 

色から生じる感覚は身近なものばかりであり、日常生活の中にはこの感覚を活かした工夫があふれています。快適な住空間をつくるためには、色の特性を生かした工夫が必要です。