日本の家は寒すぎる!年間2万人が「ヒートショック」で亡くなる深刻事情

日本の家は寒すぎる!年間2万人が「ヒートショック」で亡くなる深刻事情

日本の住宅は、他の先進諸国と比べて省エネ基準が不十分で、「ヒートショック」による悲劇が多いことをご存じでしょうか。日本の住まいにおける「ヒートショック」の実態、「住まいと健康の深い関係」、そして今後、住まいの省エネ効果を高めることで得られる「経済的メリット」について、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説していきます。

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交通事故死よりも多い「ヒートショックによる死亡者」

ヒートショックとは、寒暖差によって血圧が急変動し、失神や脳出血、心筋梗塞、不整脈などの症状を起こす現象のことです。これは特に体全体を露出する浴室で起こりやすいとされています。10℃以下に冷えた脱衣所で服を脱ぐとその刺激によって血圧が急上昇。この時点で脳出血の危険があります。そして急に熱い浴槽に浸かることで血圧は急低下し失神。そのまま浴槽の中で溺れてしまうのです。

このように家の中の寒暖差によって起きるヒートショック。厳密にヒートショックでの死亡者という統計はありませんが、たとえば東京都健康長寿医療センターの報告では、2011年には1万7,000人がヒートショックによって浴室内で死亡したといわれています。2023年の交通事故死の人数は2,678人(警察庁発表)なので、ヒートショックで亡くなる方はその6倍程度もいると考えられます。

またヒートショックで亡くなるのは高齢者が多いのだろうと想像してしまいますが、実は若い世代にも無縁ではありません。糖尿病や脂質異常症、肥満の人は若くてもヒートショックの危険が高いのです。

ヒートショックの原因は「日本の家が寒すぎること」

ヒートショックは寒い地域だけで起こるのではないかと誤解されやすいのですが、実は北海道ではヒートショック発生数が少ないという事実があります。逆に発生件数が多いのは、香川県、兵庫県、滋賀県と比較的温暖な地域。ヒートショックと年間の平均気温はあまり関係がないと分かります(東京都健康長寿医療センター調べ。ヒートショック=入浴中心肺停止状態(CPA)と定義)。

ヒートショックの原因として挙げられるのは、屋外の気温ではなく、家の中が寒すぎるという状況です。北海道の家屋は断熱性能が高く暖かいため、ヒートショックが起こりにくいという背景があるのです。

日本の家はなぜ寒いのでしょうか。

日本は戦後まもなくから高度成長期にかけて、産業構造と人口分布が大きく変動しました。地方の農村から都会に移住し会社勤めをする「集団就職」が増え、都市部では住宅不足に陥りました。そこで断熱性能や建物寿命は後回しにされ、安く大量に住宅が作られたのです。1980年以前は、無断熱住宅もあったほどです。無断熱の家は外気温とほぼ同じ室温で、布団がなければ室内で凍死することも大げさな話ではありませんでした。高齢者が住む建物はこの当時に建築されたものであることが多く、これがヒートショックの原因のひとつとなっています。

 

では近年に新築された住宅はどうかというと、世界基準で見るとやはり依然として寒いのです。先進国の中で比較すると、日本の住宅の断熱性能は最低レベルだということはあまり知られていません。

住宅の断熱性能を測る基準に、UA値というものがあります。これは外皮平均熱貫流率という意味で、家の中の熱が外皮(建物の外部と内部を隔てる境界。屋根、外壁、窓など開口部、床)を通してどのくらい逃げやすいかを示しています。この数値が低ければ「断熱性能が高い」と言えるのですが、日本の「平成28年省エネ基準」では主に関東地方以西ではUA値0.87(W/m2・K)となっています。これに対して、フランスは0.36、ドイツ0.40、英国0.42、米国0.43と先進国は軒並み高い基準を設けています。日本では北海道だけが0.46です。より高いZEH基準でも0.4なので、欧米各国の断熱基準がいかに高いかを痛感します。

断熱基準が厳しい北海道がヒートショックの件数が少ないことから、その予防には住宅性能を高めることが重要だということが分かります。「省エネ」という言葉だけを聞くと、あまり興味がないと思う方もいるでしょう。しかしヒートショックのように自分の命の問題となると、住宅性能には関心を持たざるを得ません。

高性能な断熱材を使用することで、省エネ効果は飛躍的に向上する 写真提供:AQURA HOME
高性能な断熱材を使用することで、省エネ効果は飛躍的に向上する 写真提供:AQURA HOME

断熱性能を上げることで得られる「経済的なメリット」

断熱性能は生命の安全性だけではなく、お金の面でも大きく影響してきます。

住宅ローンを借りると所得税と住民税が減税される、通称「住宅ローン減税」は2024年の入居分から建物性能に対する条件が厳しくなっています(関連記事:『【超重要】2024年1月から変わる「住宅ローン減税」知っておくべきポイントを専門家が解説』)。

認定長期優良住宅、認定低炭素住宅、ZEH基準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅のどれかに当てはまらない場合、住宅ローン減税を受けることができなくなります。断熱性能の低い住宅はもはや減税対象にすらならなくなったのです。

2023年末の段階で売れ残っていた建売住宅が省エネ基準に適合しない場合、住宅ローンを使って購入しても1円も減税されないため注意が必要です。

住宅ローン減税は2024年、2025年の入居の場合、建物の種類によって最大364~409.5万円の控除額があります。新車1台分に相当します。これが無くなるのは家計のキャッシュフロー上、大きなデメリットとなります。今後、2025年度には平成28年省エネ基準における「断熱等級4」以上の性能が最低基準として義務化されます。2030年にはさらに基準が引き上げられ、現在の「断熱等級5(ZEH基準)」が最低基準となります。

また断熱性能の高さは建物の寿命の長さとも関係があると言われています。断熱性能が低ければ建物の躯体が結露しやすく、木材が腐朽する原因となってしまうのです。建物の寿命が短ければ当然、老後に建て替えや大規模なリフォームが必要になり、大きな出費を余儀なくされます。年金制度への不安があり、給料が上がらない日本社会では、老後にもう一度住宅購入ができる人はごく一部に限られます。断熱性能を軽くみたばかりに、老後の生活がヒートショックのように命の危険にさらされ、さらにお金の計画も大きく狂ってしまうことだってあり得るのです。

断熱性能だけではない「ヒートショック対策」

断熱性能が高い建物にするだけではなく、さらに屋内の温度差を無くすためには暖房のシステムへの投資が有効です。最近では「全館空調」という種類の暖房が増えつつあります。これは、小屋裏に設置したエアコンからダクトを通して家中を温めるという仕組みです。これであれば脱衣所やトイレだけが寒すぎるということはなくなります。

ただしエアコン1台で全館を温めるため、建物の断熱性能が低ければ、外気温が低い地域ほど光熱費が高騰します。国の省エネ基準を大きく超えた断熱基準と合わせて導入することで光熱費の高騰を抑えつつ安全な室温管理が可能になります。

このように考えていくと、今後の新築価格はさらに高くなっていくことが予想されます。住宅購入時には今まで以上に資金計画を精査する必要があるでしょう。性能の高さと価格のコストパフォーマンスを見極めていく知識と、精通したプロからのアドバイスが求められます。

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2024年1月以降に変わる住宅ローン減税の利用で後悔をしないためにも、一度、専門家に相談してみることをおすすめします。